あなた色に染まりたい
「さーわ! 何ボーッとしてんの?」


「えっ……ううん、何でもないよ」



美香の方を振り返ってそう言ったけれど、美香の後方に広がるピンクが視界に入って、また顔が歪んでしまった。



「紗羽?」



そんなあたしの変化に気付いたのか、美香が心配そうな声を出した。



「大丈夫だから。ちょっと散歩してくるね」



ゆっくりと立ち上がって、大っ嫌いなピンク色をめざす。


ピンク色が視界を制覇する頃には、目にたまっていた涙がポロポロとこぼれ始めた。



いつになったら忘れられるんだろう……


いつになったら思い出にかわるんだろう……


いつになったら新しい恋をしようと思えるんだろう……



ピンク色を見上げながら、ただただ涙を流していた。
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