あなた色に染まりたい
「でも……言い訳は、しなかった。むしろ、あたしが見ているのをわかってて、女を抱いたって……」




そう言った瞬間、目からホロリと涙がこぼれた。




「意味がわからなくて……何でそんなことをしたのか、ホントにわからなくて……」


「ん…」




この瞬間、大輝が言っていた言葉が頭の中を占領する。




『何であんな大切なことを忘れんだよ!』




“大切なこと”……


確かに、あれは大切な約束だったのかもしれない。


でも……


じゃあ、なんで他の女(ヒト)を抱いたの……?




「紗羽?」


「あたし……」




止まっていた涙が、また溢れそうになって、顔を伏せた。




「あたし……大輝との約束を、忘れてた」


「約束?」


「うん……最後に会った日に、約束したのに……桜の木の下でのことがあまりにショックで……大切な約束を、忘れちゃってた」


「……その約束って、何?」


「……」




蓮……


あたしわかんないの……


自分がどうしたいのか……


わかんないの――…


< 158 / 423 >

この作品をシェア

pagetop