あなた色に染まりたい
「これから紗羽を連れ出して、半日借りたいんだけど……」




あたしを、連れ出す?




「……俺、紗羽から話聞くまでは、大輝さんのこと、ホントに尊敬してたんです」


「過去形か?」


「最低です……浮気とか」




晴希がそう言ってくれたことで、救われたような気持ちになる。




「晴希……もういいよ」


「でも、紗羽……」




ホントにそれだけで十分だった。逆にそれ以上言われたら、虚しくなるような気がして、続けようとしている晴希を止めた。




「晴希も紗羽のことが好きだったもんな……もしかして今でも好きなのか?」


「大輝さんには関係ないです。」


「はは……俺、晴希に嫌われたな」


「紗羽、行くことねぇよ……蓮だって待ってんだし」




晴希はそう言うけれど、一度は大輝ときちんと話をしなければならない。




「蓮って、紗羽の彼氏?」




コクンと頷いた。




「紗羽……今から出れねぇ?」


「……わかった」


「ちょっ、紗羽!待てって!」




晴希が止めようとするけれど、それを振りきるように言葉を放つ。




「ごめん、晴希……蓮に言っといてくれる?あとで蓮の部屋行くからって」


「……自分で言えよ。ちゃんと蓮の顔見て言えよ」


「……蓮の顔見たら、言えなくなるから、晴希から言って……お願い」




『NO』と言われると思ったから、返事は聞かずに、そのまま大輝についていった。


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