あなた色に染まりたい
「俺、ずりぃんだ。約束だけして、紗羽を縛ろうなんて……そんなことすっからこんなことになんだよな」




肩を落としながら呟くようにそう言った大輝。


でも……


そんなにあたしのことを、想っていてくれたのなら……




「……じゃあ何で、女の人を抱いたの?」


「だから……俺が弱かったんだ。紗羽はあの約束を守ってくれるって信じてた。でも俺は、自分に自信がなくて……あーでもすりゃ、紗羽からすんなり離れられるって……アメリカでも頑張れるって……、そんな最低なことを思ったんだ」




大輝も、あたしから離れたくないって思ってくれていた。


でも、自分がスッパリと離れるために、女の人を抱いたってこと?


そんなのって……




「……大輝が“待っててくれ”って言ってくれたら、あたし待てたよ?二年だって五年だって待てた。何で、そう言ってくれなかったの?」




あたしはどれだけでも待てるくらいに、大輝のことが好きだった。


それに、こうやって二年以上忘れられなかったんだから。


そう思うと、また涙があふれてきた。


それに気付いた大輝は、包み込むようにあたしを抱き締めた。




「ごめん……ごめんな、紗羽……」




今にも消え入りそうな大輝の声に、胸が痛くなる。




しばらくそうしていたら、ようやく涙が止まった。


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