あなた色に染まりたい
「紗羽から“別れたい”ってメールが来た時、俺、自分がどれだけひどいことをやったのか……気付いた。でも紗羽とは別れたくなくて、返事しなかった」


「ズルい……大輝はズルいよ。あたしがどんなに辛い想いしたか……」




大輝と別れてからの二年は、あたしにとって何も中身のないものだった。


空っぽの二年……


美香と悟がいなかったら、あたしはもう、存在さえしていなかったのかもしれない。


それほど辛い出来事だった。




「紗羽……俺、今でも紗羽のことが好きだ。また付き合いてぇ」




抱き締める大輝の腕に力が入った。


その仕草に、どうしていいのかわからなくなる。




「だい……き?」


「忘れられるわけねぇよ……こんなに人を愛したのは初めてだ。紗羽、俺んとこに戻ってきてくれよっ」




苦しそうに想いを伝えてくる大輝に、胸がはち切れそうに痛くなって……心が揺れる……




「大輝ッ……」




あたしは無意識に、大輝の背中に腕を回して抱きついていた。


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