あなた色に染まりたい
「紗羽……俺、ぜってぇに紗羽を取り戻すから」


「……」




大輝の瞳からは、強い意思というものが見える。


どうしよう……


大輝の瞳を見ていたら、その強い想いに流されそうな気がして……視線を落とした。




しばらく沈黙が続いたあと……




「……紗羽、腹減らねぇか?なんか食いに行こう?」




さっきとはまるで違う、明るい声でそう言う大輝。


でも……




「……行かない。アパートまで送って」


「……」




そのあとはどちらも口を開かなかった。




助手席に座り、ボーッと窓の外を眺めていたら、いつの間にかアパートに着いていた。


ドアに手をかけて開けようすると、大輝に右手をつかまれた。




「紗羽……携帯変わってねぇ?」


「……うん」


「じゃあ、かける」




そう言ったあと、つかまれた右手をグイッと引っ張られて、大輝の胸に顔があたった。


でも……


すぐに胸を押して離れた。




「はぁ……紗羽は手強そうだな。覚悟しとく」




大輝はため息混じりにそう言って、手を離した。




車から降りると、大輝はあたしに向かって軽く手を上げたあと、そのままゆっくりと走り去っていった。


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