あなた色に染まりたい
「ホントはすっげぇ嫌だけど……そのおかゆ下さい。紗羽、食べれる?」


「……うん」




“うん”とは言ったけれど、元カレが作ったものを彼女が食べるって……嫌に決まってる。


蓮に申し訳なくて、涙が出そうになってきた。




それでも、今はそのおかゆを食べて薬を飲んだ方がいいと思うから、大輝が持ってきてくれたそれを、少し食べてから薬を飲んだ。




「大輝さん……合鍵返してください」


「やっぱ返さねぇとダメ?」


「当たり前です!」




蓮が真剣な表情で、はっきりと言い放つのを見て、また心臓がぎゅっとつかまれたように痛くなった。


そんな蓮を前に、大輝はため息混じりに口を開いた。




「お守りだったのにな……」


「何の?」




何で鍵がお守りになるのかわからず、つい聞いてしまった。




「紗羽とまた付き合えますようにって」


「……」




あまりにまっすぐな瞳を向けながら話すから、言葉に詰まる。




「効き目ないっすね、それ」




そんな空気を壊すように、蓮がビックリするようなことを口にした。




「……おまえ、言うねぇ?」


「つーか、もう紗羽には手ぇ出さないで下さい」


「“手ぇ出す”って何?もしかしてキスのこと?」




!!!!!




まさか、大輝からそんなことを言い出すなんて思わないから、蓮もあたしも固まってしまった。




「昨日それで喧嘩でもした?」


「え……何、で?」




熱であやふやになっていた昨夜のことが、少しずつ脳内に浮かんでくる。




「図星?紗羽の目がちょっと腫れぼったい……泣いたんだろ?」


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