あなた色に染まりたい
「紗羽から大輝さんとのキスが嫌じゃなかったって聞いて、俺すっげぇ嫉妬して、イライラしてた。あのまま一緒にいたら……、嫌がる紗羽を無理矢理抱きそうだったから」




そう言った蓮は、眉を下げたまま視線を落としてしまった。


蓮はあたしの前じゃいつも、笑顔でやさしく接してくれる。


今、蓮にこんな表情をさせているのは、間違いなくあたしなんだ。




「それでも良かったのに……あたしの方が先に蓮を傷つけたんだよ?無理矢理でも抱いてくれたほうが良かった。一人は寂しくて……ヤダよ」




昨夜、蓮が部屋を出ていったあと、一人ポツンと残されて……


凄く寂しかった。


凄く悲しかった。


そのときの自分を思い出して、目の奥が熱くなる。




「紗羽?」


「一人は嫌なのっ、一人にしないでよっ!……ふぇっ……」




さっきとは対照的に、やさしい瞳を向けてくれるから、目から大粒の涙が溢れてきた。




「紗羽、ごめん」




蓮は布団をまくって、そのまま包み込むように、ぎゅっと抱き締めてくれた。




「蓮、もう一人にしないで……」


「紗羽、ホントにごめんな。……つか、もしかして昨日、あのまま寝たのか?」




腕が少し緩んで、蓮は顔を覗き込んできた。




「あのままって?」


「服着てなかっただろ?」


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