あなた色に染まりたい
「ちょ、ちょっと待って!紗羽のこと誘うって何よ!?」



美香の方が焦ってるし……



「人妻は紗羽のことだったんだよ」



悟がため息混じりに言った。



「えーーー!?」



美香が食堂に響き渡るくらいの、大声で叫んだ。



「うるせー」



そんな美香に、晴希が自分の両耳に人差し指を突っ込んで、耳を塞ぐ。



「じゃあダメだよ、ダメ!紗羽のこと誘っちゃダメ!熱い夜過ごしちゃダメだよ!!」



ぷっ……


必死にしゃべる美香、可愛すぎ。


凄く、ウケる。



「ちょっと紗羽、何笑ってんのよ!?」


「ごめん、だって美香必死だから」



まだ笑いをこらえながら言うと、隣に立っている蓮が口を開いた。



「俺も必死に反対するからな。晴希さん、誘わないでくださいね」


「はは……誘わねぇよ。俺の入る隙ねぇし」



一瞬だけ、瞳の奥に哀しみの色を見せた晴希。


それに気付かないフリをして、蓮に話しかけた。



「あ、蓮……大輝から電話きた」


「マジ?どうなった?」


「明後日会うことになったんだけど、ちゃんと話してきていい?」


「ん、頑張ってこいよ」




蓮はやさしい笑みを浮かべながらそう言って、頭をクシャクシャと撫でてくれた。


< 200 / 423 >

この作品をシェア

pagetop