あなた色に染まりたい
そのあと、冷蔵庫にあるもので簡単に夕食を作って食べた。



「そういや……大輝さんにプロポーズされた時、気持ちは揺れなかったのか?」



熱々のチャーハンを口に含みながら、視線だけを合わせて聞いてきた。



「揺れなかったって言ったら嘘になるかもね。でもプロポーズを受けるっていう選択は、一度も考えなかったよ」


「へぇー」



「晴希……大輝ってさ、入社してからのこの二年半、アメリカにいたんだって」


「は?マジ?」



驚きのあまり勢いよく顔をあげた晴希は、掬ったチャーハンを、スプーンからポロリとこぼした。



「うん……あたしに“待ってて”って言えなくて、あんな別れ方になっちゃったみたい」


「“待てない”って言われるのが怖かったんだろうな」



大輝が言ってたことと同じ言葉……


男の晴希には、その気持ちがわかるのかもしれないな。


でも……



「あたしは、“待ってて”って言ってくれたら、何年でも待ってたと思うな。それほど好きだったし」



もしそうだったとしたら、蓮と出会った時はどうなったんだろうなぁ。


やっぱり蓮を好きになってるのかな。


結局、大輝のことを待てなかったりしたのかな。


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