あなた色に染まりたい
最後に抱かれた日、優しすぎたけど、何も疑いもしなかった……


あの時に大輝の異変に気付いていれば、何か違っていたんだろうか……




でも桜の木の下の出来事を見た時、何も考えられなくなった。


この世界の色をすべて失って、モノクロの世界になった気がした。




「紗羽、少し歩こう」




着いた場所は、よく二人で歩いた大きな公園。


緑もあって、池もあって、ずっと歩いていても飽きない、そんな場所。




「手ぇ繋いでもいいか?」




これが最後だと思ったら、無意識にコクンと頷いていた。




手をつなぎながら、ゆっくりと歩く。


大きな池の前にある、ベンチに肩を並べて座った。


返事をしなきゃならないのに、さっき思い出していた、大輝との思い出が深すぎて……


あの時はホントに幸せだったから……


何も言えなくなった。




その代わりに出たものは……



涙だった。


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