あなた色に染まりたい
「あいつって……」


「あいつ?」




突然大輝の口から発せられたその言葉。


曖昧すぎて、誰のことかわからず首をかしげた。


大輝はそんなあたしに、“ふっ”と笑いながら口を開く。




「その蓮ってやつ……見たことねぇけど、年下?」




あ、蓮のことか……


今、あたしが自分から、蓮の名前を出したんだった。




「うん……三つ下」


「三つ?そんなふうに見えねぇな」


「時々、蓮のほうが年上じゃないかって感じる」


「紗羽、子供っぽいとこあるから余計じゃね?」


「はは……そうだね」




蓮はホントに大人っぽくて……いつもあたしが“よしよし”と頭を撫でられてるような感じなんだ。




「そういや、晴希は俺のこと嫌いになってっかな?」


「え、何で?」


「この間会った時、見損なったって顔されたからな」




大輝の横顔が凄く寂しそうに見える。


晴希が大輝を尊敬していたと同時に、大輝も晴希のことを物凄くかわいがっていた。


あれだけなつかれたら、離れられると寂しいんだよね、きっと。




「もう大丈夫だと思うよ」


「ん?何で?」


「一昨日だったかな……大輝のこと、男らしいなぁって言ってたよ」


「男らしい?俺、なんかしたっけ?」




大輝は手を顎に添えながら、首をかしげる。


そんな大輝を見ながら、一昨日、蓮の前でプロポーズしたって聞いて、目を輝かせていた晴希の姿を思い出す。




「ふふ……とにかく、前の晴希に戻りつつあると思うよ」


「そっか……」




そんなことを話してたら、いつの間にかアパートに着いていた。


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