あなた色に染まりたい
「……浮気してたことに、まったく気付かなかった。ていうか、きっとその時点で、あたしが浮気相手だったんだ。だって、そのあと“別れたい”って、メールを送ったのに……、返事もなかったの……うぅ……」




そこまで話したあと、横に座っていた蓮が動く気配がした。


気付いたら、少し離れていた距離が縮まっていて、蓮は……、あたしの方を向いていた。




「紗羽さん、抱き締めてもいい?俺の胸は広いよ。……心も体も、ちゃんと広い」


「……それ、昨日聞いてたんだ?」




昨日、悟が“俺の胸で泣け”って言うから、“悟は心も体も小さいから泣けない”って言ったんだ。


悟は美香の彼氏だし、そう言われても、絶対に胸は借りない。


悟も本気じゃないしね。




蓮の言ってくれた言葉で、心が少し和んだ気がした。




「紗羽さん?」


「ん、いいよ。あたしも、その胸を……借りたい」
< 29 / 423 >

この作品をシェア

pagetop