あなた色に染まりたい
バッグから携帯を取り出した。




「……っ!」




着信履歴が、すべて蓮の名前で埋まっていた。




蓮っ――




気付いたら、リダイアルして携帯を耳に当てていた。




“紗羽っ!どこにいるんだよっ!?”




蓮の慌てた声。




「ごめっ、……蓮っ、ごめんっ!」




涙がぽろぽろと溢れてきた。




“紗羽っ、泣いてんのか?今すぐ行くから、そこを動くなよっ!”




電話を切って、ものの数分でやって来た蓮。




「蓮っ!」




そう言って、蓮に抱きついた。




「ごめんなさっ……」




そのまましがみついたあたしを、蓮はぎゅっと抱き締めてくれた。




「俺も、ごめん。今日は、ほんとは紗羽のやりたいようにさせるつもりだったんだ」




やりたいように?




「それなのに、俺……」




そう言って、蓮は自分の髪の毛をクシャクシャに掻き回して、溜め息を吐いた。
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