あなた色に染まりたい
そのあとすぐに、蓮が運転席に乗り込んできた。




「紗羽、……早く会いたかった」




そう言って、大きな左手であたしの頬を包む。




「蓮?」




少し眉を下げながら笑う蓮の姿に、いつもとは違う空気を感じる。




「蓮、何かあった?」




いつもはもっと、曇りのない笑顔を見せてくれるのに……


こんな風に少しでも曇りが見えると、不安になってしまう。




「もしかしたら、“今日は会えない”って言われるかもしれねぇと思ってた」


「えっ!?」




予想外の蓮の言葉に、驚きを隠せない。




「何で?今日はあたしが会いたいって言ったんだよ?」




今日はバレンタインデーだから、蓮に会わないことの方があり得ない。


ていうか、蓮だって今日がバレンタインデーだってわかっているはず。


なのに、……何で?
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