あなた色に染まりたい
PINK3
ここへやって来たのが、少し遅めだったということもあって、賑やかだったこの場所も、少しずつ静かな空間へと変わっていく。
もともと、人がまだらだったこの場所は、全く人がいなくなってしまった。
ここから見えるものは、マッチ棒ほどの大きさの酔っぱらった人達が、ふらふらと踊っている姿と……
視界いっぱいに入ってくる、数えきれないほどの桜の木だけ。
声も遠くの方でざわざわしているだけだからか、なんだか、あたし達だけ異空間にいるような感覚に陥ってしまう。
袋の中に手を伸ばし、またプシュッと音をたてながら、プルタブを開ける。
その瞬間、隣から“ふっ”と声が漏れたのを、聞き逃さなかった。
「何?」
「何本目?」
「……五本目、かな?」
周りに転がっている缶を見つめながら、ザッと数えてみる。