あなた色に染まりたい
翌日、蓮に手を引かれながら、あの場所へ向かった。
近づくにつれて、自分でも足の進みが遅くなっていることに気付いていた。
でも蓮は……何も言わない。
ゆっくりいこうって言ってくれていたから。
遠くにだけど、グリーンに変わったあの桜の木が見える。
蓮の手を握る手に力が入った。
足も動かなくなってしまった。
「……蓮、あたしね、あれから……ここに来るの、初めてなの。」
「うん。」
「……こわい。」
あのときの自分の気持ちを思い出して、声が震える。
ずっと自分を保っていられるのか、不安になる。
そんなあたしに気付いたのか、蓮があたしの顔を覗き込んできた。
「紗羽さん、無理しなくてもいいよ。ここに来るって決心したことだけでも、すげぇことなんだから。今日はこのまま帰ってもいいんだぞ。」