あなた色に染まりたい
講義を受けながら、頭の中はさっきの蓮の顔でいっぱいだった。
凄く悲しそうな顔をしていた。
そんな顔をさせたのは……間違いなく、あたし。
「ねぇ紗羽。」
横に座っている美香が、ヒソヒソと話し掛けてきた。
「ん?」
視線は前にある黒板に向けながら、聴覚は美香へと集中する。
「前にも聞いたけど……蓮くんのことが好きなの?」
今のあたしには、答えにくい質問だった。
「……正直、わかんない。でも、蓮がいない生活は考えられない。これってなんなんだろうね。」
あたしの答えに、美香は少し考え込んだあと、また口を開いた。
「紗羽……蓮くんと飲み会に参加してみたら?」
「え!?」
あたしが、この飲み会をどんなに避けていたのかを、知っているはずなのに……
「きっと、蓮くんとなら乗り越えられると思うよ。」
でも、あたしもそんな気がしていた。
「蓮くんと一緒にいる時の紗羽って、凄く生き生きしてる……出会った頃の紗羽みたいに。」
出会った頃のあたし?