あなた色に染まりたい
 そのまま大輝に“別れたい”とメールを送った。


約一ヶ月前に卒業した大輝には、会いに行かないかぎり会うことはない。


大輝も“別れたい”メールに承諾したのか、会いにくることも、返事さえもなかった。


別れってあっけないんだ。



あれから、男の人が信じられなくなった。


みんながみんなそんな人とは限らないけれど、あたしの心にできた傷は相当大きなものだった。



信じられない一方で、大輝を忘れられない自分もいた。


あの頃の想いとは違うけれど、思い出すと胸がぎゅっとつかまれたように痛くなる。


早く忘れたい……


早くこの痛みが消えてほしい……




「……の……あの!」



ボーッとしていたあたしにかけられた声。


顔を上げると、目の前には綺麗な顔をした長身の男の子がいた。



「あ、ごめんなさい。どうかした?」



スーツを着ているってことは新入生なんだ。
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