紅い花に口付けを。
「せいぜい、白河藩主様に失礼のないように気ぃつけな」

月の光りによって、彼の綺麗な顔がぼんやり照らされる。

「わっちを誰だと思っているのでありんしょう?わっちはここ、鈴屋の看板、夕霧(ゆうぎり)でござんすゆえ」

わっちは、いつもの如く微笑んだ。

「夕霧の花魁、目が笑ってねぇけど?」

「当たり前でござんすよ。花魁が誠の笑顔を見せるのは、惚れた男にだけでありんすから」

わっちがそう言うと、歳三はケラケラと笑った。

「おもしれぇ奴だよな、お前」

例えば、今時間が止まるなら、わっちはもうこれ以上何も望まないと思う。

遊女が犯してはいけない罪を犯したのかもしれない。

わっちは彼が好き。

本当は白河藩主のところなんかより

彼の美しい笑顔を見ていたい。













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