障害者離婚
その日武蔵野公会堂に洋のいう運命の女が固めで緑内障らしいが単独歩行できるらしい。彼女がふらりと拡大読書機の展示会にやってきた。その瞬間洋はひと目で恋に落ちて一目ぼれできるほど目がいいのかよ
というみのりの突っ込みもあったが
「パパは髪の長い女性が好きなの。ママも20代であなたを生むまでロングだったの。ロングかショートか全盲でなきゃわかるでしょ。」
「ロングでも顔見えないじゃん」と晴眼のみのりは弱視の世界を理解できないようだった。
「盲学校の10年後輩で俺と境遇が似てるんだ。マッサージ師から事務職になって。契約社員だから3月までなんだけどね」
「10年後輩は77年生まれ?」
と私が聞くと「そうだよ。あんたと同じ5月生まれ」
私は気の合う後輩ができたのかなと思っていた。
わたしは矯正で0・2の左目を頼りに普通学校に通っていたしマッサージの話題も盲学校の話題も入っていけなかったから。
みのりの卒業と中学入学で不安でいっぱいだったから。
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