恋の魔法と甘い罠
「最初は食事に誘われて。あのときは好きというより気になってるだけだったんですけど……。一緒に過ごしていくうちに、いつの間にか好きになっていたんです」



和泉さんから訊いてくれたおかげで話しやすくなった。あんなに話せないと思っていたことでも、こうやって口からするすると言葉が飛び出していく。


だけど――



「和泉さんと、バーで会った日……」



失恋の痛みがまだ癒えていないからか、決定打を打たれた日のところで言葉に詰まってしまった。


そしてその代わりに出てきたものが――涙で。


それを見られないようにと慌てて顔を伏せるけれど……



「玲夢?」



突然黙りこんでしまったあたしを不思議に思ったのか、和泉さんは顔を覗き込んできた。



「場所、変えようか」


「えっ」



すぐにあの日のことを突っ込まれると思っていたから、和泉さんの予想外の言葉に吃驚して、思わず顔をあげてしまった。


そしたら当たり前だけれど、ばちっ、と目が合って。


そんなあたしを見て、和泉さんはまたふっと笑みを漏らした。
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