恋の魔法と甘い罠
しばらく息の詰まるような沈黙が続いたあと、慎也さんが静かに口を開いた。



「それって……」


「えっ」


「その好きな奴って……和泉のこと?」


「えっ!?」



昨日休憩室であたしが和泉さんと話しているのを聞いていたから、慎也さんがそう思うのは自然なことかもしれない。


それに和泉さんとは付き合うふりをすると約束した。


だから慎也さんのその言葉に頷けばいいってわかっている。


だけど、あたしの心の中にはいまだに慎也さんがどっしりと居座っているからか、すぐにそれに答えることができなかった。


なにも言わずに俯いたままのあたしに、慎也さんは



「俺が……、別れない、って言ったら?」



なんて言ってきた。
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