恋の魔法と甘い罠
「だって……これ、めちゃくちゃ美味しいから」


「そう言ってもらえると作りがいがある。それより……君、ここに来るのは初めてだよね?」


「はい……実は道に迷っちゃって……ほんとは道を訊ねるつもりで入ろうと思ったんですけど、ついでに飲んでいこうかなと……」


「そうなんだ」



そう言った本郷さんは手の甲を口許にあてて、ククッと我慢するような笑いを漏らした。



「えっ、どうしたんですか?」



あまりにも可笑しそうに笑うから、あたし、なにか笑われるようなことをしたっけ?なんて思いながら、本郷さんを見上げる。


そしたら、いまだに必死に笑いを堪えながら



「いや……前にも道に迷って入ってきた子がいたからさ。しかも二度も……」



そう言った本郷さんはとても楽しそうで。


どうやらその時のことを思い出しているようだった。
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