恋の魔法と甘い罠
しばらくすると店内も混み始めてきて、カウンター10席、4人掛けのテーブルが6脚ほどの小さなバーだから、カウンター席を2~3席残した以外はすぐに埋まってしまい、あたしに構ってくれていた本郷さんも慌ただしく仕事し始めた。


そうなると1人寂しく飲むしかなくて。


さっき見た光景が脳裏に鮮明に浮かび上がってきた。


それと同時に、目頭が熱くなってじわりじわりと涙が滲んでくる。


それを打ち消すように、グラス3分の1ほど残っていたカクテルをぐいっと一気に飲み干した。


そしてちょうど目の前を通りかかった本郷さんに声をかけた。



「おかわり下さい」


「同じものでいい?」


「はい」


「りょーかい」



やさしい笑みを浮かべながらそう言った本郷さんは、目の前でカクテルを作ってくれた。
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