恋の魔法と甘い罠
何を言いたいのかわからなくて、女湯の暖簾を先に潜っていった紗羽さんの背中をじっと見つめながらついていく。



「違っていたらごめんね」



着替えを置くための籠の前で足を止めて、そう前置きした紗羽さんは、ちょっと声のトーンを落としてあたしの耳元でこっそりと続きを口にした。



「手を出されたんじゃないの?」


「!」



『何かあったんでしょ?』と言われた時点で、そんな風に想像しているかもしれないとは思っていたけれど、それを口に出されるとは思わなくて。


紗羽さんが探るようにじっとあたしの瞳を見つめてくるから、また頬がかっと熱くなった。


そんなあたしを見て、ふふふ、と微笑んだ紗羽さん。



「ちゃんと想われていると思うよ」


「え」


「晴希はどうでもいい子に手を出したりはしないから」


「えっと……紗羽さん?」



紗羽さんの言いたいことがわからなくて首を傾げる。
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