恋の魔法と甘い罠
1人で飲んでいるというのもあるけれど、早くあの光景を脳内から追い出したくて、つい手がグラスに伸びてしまう。


2杯目を飲み干したところで、頭がくらくらしていることに気づいていた。


でも、飲むことはやめられなくて……



「あの……アルコールが弱めで甘いカクテルをお願いしたいんですけど」



時々、ふっ、と瞼が落ちそうなのを感じながらも注文してしまった。


そんなあたしを見て本郷さんは



「相当酔ってるみたいだけれど大丈夫?」



と訊いてきた。


もちろんあたしは「大丈夫です」と答えた。


そんな確信はどこにもないけれど。


どちらかというと“大丈夫じゃない”の方が妥当だと思う。


でも今は飲みたかった。
飲んで忘れたかった。


だけど飲みすぎて思考能力が衰えてしまっているからか、このまま飲んでいればさっきの光景が夢だと気付くかもしれない、とありえないことまで考えるようになっていた。
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