恋の魔法と甘い罠
「和泉とはうまくいっているのか？」


「え？」



頭の中が和泉さんのことでいっぱいになり始めたときにかけられた言葉。


そういえば慎也さんは、和泉さんとあたしが付き合っていると思っているんだよね。


けれど、ほんとは付き合っているふりだった。


そして今はそれすら解消している。


だからそんなことを訊かれても何て答えればいいのかわからない。


何も言えずに口を閉ざしていると、



「さっき女子社員に誘われていたぞ」


「……」



うん、知ってる。


その光景を見ているのが苦しくなって逃げ出しちゃったんだもん。


それに、和泉さんが誘われていても、その誘いに乗ったとしても、あたしは何も言えない。


和泉さんにとってあたしは、失恋という同じ想いを抱えているただの同士だから。
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