恋の魔法と甘い罠
面白くない?



「えっと……」



どういう意味?


それを問うように和泉さんの横顔を見つめる。


そしたらあたしの視線に気づいたのか、和泉さんはゆっくりとこっちを向いた。


その表情は眉を寄せながら苦笑していて。


あたしには和泉さんが何を言いたいのかわからない。


その先の言葉を促すように、更にじっと見つめる。


けれど和泉さんの口からは何も飛び出して来なくて。


その代わりに、遠くの方から何やら騒がしい声が耳に届いてきて、その声に反応するように和泉さんは「やべっ」と呟くと、あたしの手首を掴みながら「こっちに来て」と言って速足で歩き始めた。


何がなんだかわからないままついていくけれど、和泉さんに掴まれた左手首に意識が集中してしまい、どきどきと鼓動が速くなる。


和泉さんとは同じ布団の中で寝たこともあるのに、想いを自覚したとたん、ただ手首を掴まれただけでその場所が熱くなった。


そしてそこから伝染するように全身にも熱が広がっていく。



うぅ、このまま一緒にいたら身体がもたないよ……。
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