恋の魔法と甘い罠
そして連れていかれた場所は、別館の階段横にある小さなスペースで。



「わりぃ。ちょっと見つかりたくねーからここでもいい?」



確かにここは全くと言っていいほど人気がないし、隠れ場所にもなると思う。


けれど、気になる。


誰に見つかりたくないの?


訊いてもいいかな?


――いいよね?



「誰に、ですか?」



あたしの質問に和泉さんは微かに瞳を揺らした。
そして言いにくそうに口を開く。



「あーうん、……さっき、一緒に飲もうって誘われて断ったんだけど、それでも諦めてくんねーから逃げてきたんだよ」


「……」



それって、さっきの女の子たちのことだよね?


逃げてきたんだ。
てことは、また追いかけてくるかもしれないってこと?


あ……


だからさっき、人の声から逃げるように慌ててあの場からあたしの手を掴んで歩き始めたんだ。
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