恋の魔法と甘い罠
って!


まだ手を掴まれている!


今ちょっと忘れていたのに、また思い出したからか、冷めていた熱がまたぐんぐんと上がっていく。


早く離してくれないかな。


ていうか、あたしから離してもいいかな?
そんなことしたら感じ悪い?


けれど、心臓は壊れてしまいそうなほどにばくばくいっているし、頬どころか身体中まで熱くなって血液が沸騰しそうになっているし、ほんと身体がもたない!


だから、離してもいいよね?


真っ赤な顔を隠すように伏せながら視線だけをあげて、



「あの……」


「ん?」


「離しても、いいですか?」



少し左手を上にあげながらそう言うと、



「あ、わり」



そう言ってぱっと離された。


その瞬間、手首の体温が一気に下がって、身体の熱も引いていく。


離してほしくて言ったことだったのに、突き放されたように寂しくなってしまった。


酷く矛盾している。
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