恋の魔法と甘い罠
身体の熱が引いたことで、湯冷めしたように急に寒くなってきて、無意識に二の腕を擦る。



「さみぃ?」


「え」


「ここちょっとひんやりするもんな。風呂上がりだとさみーよな」



確かに人気がないし、ひんやりする。


けれどあたしが寒くなったのはそのせいじゃなくて。
湯冷めしたみたいだけれど、全然違って。


和泉さんが手を離したから、なんて言えるわけがない。


俯いたまま、いろいろ考えていると、ふわり、と和泉さんが羽織っていた羽織を肩に掛けてくれた。


けれど、あたしも浴衣の上には羽織を着ているし、何より和泉さんが浴衣一枚になって寒くなってしまうから、



「大丈夫です!」



そう言ってそれを返そうと和泉さんを見上げると、どきんっ――と胸が大きく高鳴った。
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