恋の魔法と甘い罠
あまりにも必死に断るからか、和泉さんは苦笑しながらそれを受け取って、そのまま羽織った。


気づいたらその動作をじっと観察するように見つめていて。


それに気づいた和泉さんは「ん?」と眉を上げる。


けれど、和泉さんのひとつひとつの仕草がかっこよくて見惚れていた、なんて言えるわけがなくて、



「な、何でもないですっ」



と首を大きく横に振った。


そして訪れた沈黙。


前までは和泉さんとのこういう静かな時間ですら居心地がいいと感じていたけれど、和泉さんへの想いに気づいた今、二人きり、というこの状況に、どきどきと心臓が激しく動き始める。


この音を鎮めるために手を胸に当てて深呼吸するけれど何も変わらなくて。


この空気を変えるために何か喋ればいいんだ、と頭の中をフル回転させて話題を探す。


あ……!
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