恋の魔法と甘い罠
強引で貪るような、けれどやさしくあたたかなそのキスにいつの間にか身体中が熱くなっていて。


けれどふと思う。


こうやって想い合っている訳じゃないのにキスなんてしちゃったら、慎也さんのときと変わらない。


あたしがどんなに和泉さんのことが好きだとしても、こんなキスは嫌だ。


そう思うと、目の奥が熱くなってきて、閉じている目尻の方から涙がこぼれてしまった。


そんなあたしに気づいたのか、和泉さんが体を離してあたしの顔を覗き込んできた。


そして親指でそーっと涙を拭いながら、



「嫌……だった?」



と訊いてきたけれど、和泉さんとのキスが嫌なわけじゃない。


ただ、想いがないのにこんなことをされるのが嫌なだけだ。
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