恋の魔法と甘い罠
大きく波打つ鼓動を抑えるように大きく深呼吸してから、ゆっくりと後ろを振り返ると……


あ……、この人。


視界に入ってきた男の人の顔を見て、昨夜のことが一気に頭の中を駆け巡った。


慎也さんに奥さんがいたこと。


慎也さんにとって、あたしはただの遊び相手だったということ。


偶然立ち寄ったバーで、何も考えずに飲みまくったこと。


そして意識が途切れる直前に視界に飛び込んできた男の人。


その人が今目の前にいる人……和泉(イズミ)さん。


慎也さんと同じ営業課で主任をしている。


25才でめちゃくちゃイケメン。


営業にしては明るすぎるんじゃないかというほどの茶髪で、瞳を少し隠してしまうほどの長めの前髪。


外見だけを見ていると、結構遊んでいそうな雰囲気が漂っている。


でも実際は、女の方からどれだけ誘っても受け入れられることはなく、そういう浮いた噂は聞いたことがない。


どうやら、忘れられない女性(ヒト)がいるとか。


ほんとかどうかはわからないけれど。
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