恋の魔法と甘い罠
「耳まで真っ赤」



赤くなった顔を伏せても、バレバレだったらしい。


でも、何でこんな風に呼び止められるのかわからなくて、



「何か、用ですか?」



なんて、他人行儀な訊き方をしてしまった。


そんなあたしに、和泉さんはまた、ふっ、と笑みを漏らす。


そして、



「忘れ物をしていったよ」


「えっ」



そう言って顔を上げた瞬間目に飛び込んできたのは……


慎也さんの腕時計。


そういえば、昨日はずっとこの腕時計を握りしめながら飲んでいた。


なのに、目覚めたときの状況があまりにも衝撃的すぎて、これの存在をすっかり忘れてしまっていた。


もとはといえば、この腕時計を届けるために出掛けたというのに……。
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