恋の魔法と甘い罠
「これってさ……」



何か言いたげに口を開いた和泉さんを遮るように



「ありがとうございます!」



慌ててそう言って、それを奪うように和泉さんの手から抜き取った。


和泉さんは毎日慎也さんと会っているから、きっとこの腕時計が誰のものか気付いているんだ。


だって、この腕時計は何かの記念品で貰ったものだから、店頭では並んでいないもの……と言っていたから。


そして普段は肌身離さず大切にしているもの。


そんなものをあたしが持っているなんて、慎也さんとあたしの関係に気付かれたに違いない。


そう思うと、早くこの場を去りたかった。


だけど、あたしの手首はいまだに掴まれていて。


振り払おうとしても離してもらえない。


どうしよう……。


そう思っていると、タイミングよくバッグの中で携帯が震えた。
< 40 / 357 >

この作品をシェア

pagetop