恋の魔法と甘い罠
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アパートに帰って、シャワーを浴びて、夕食を作る。


慎也さんが来るときの行動パターンだ。


もう二人きりで会ってはいけない……と思いながらも、腕時計を返さなければならないからしょうがない……なんて、自分の中で尤もらしい理由をつけながら、いつものように慎也さんがやって来るのを待っている自分がいた。


我ながら、馬鹿だと思う。


でもこんなに好きになってしまったんだもん。


そう簡単には忘れることなんてできない。


会社では常に慎也さんの姿を探して、会うことができたら心が弾む。


そして勤務時間が終われば、慎也さんからのメールや電話を待って、連絡がくれば胸が高鳴る。


その上、うちに来るとわかれば、こうやってうきうきしながら夕食の準備をする。


そして会えば、吸い寄せられるように肌を重ねる。


一日のどの時間を覗いてみてもそこには慎也さんがいる。


毎日が慎也さんで一杯だったのに、急に諦めろと言われても諦められるわけがない。
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