恋の魔法と甘い罠
これで良かったといえば良かったし、良くなかったといえば良くなかった。


慎也さんとちゃんと話し合うことが必要だとは思うけれど、今のあたしは冷静に話をできないと思う。


たぶんいつものように流されて終わってしまう。


だから今は慎也さんとは二人きりで会わない方がいいし、こうやって和泉さんが食事に誘ってくれてよかったんだと思う。


だけどやっぱり、結果はわかっているんだからはっきりさせた方がいいとも思う。


こうやってあたしの中で慎也さんとの関係を曖昧にしているから、何が良くて何が悪いのかわからなくなってしまうんだ。


そんなことを延々と考えているあたしの顔をずっと覗き込んでいた和泉さんは、あたしがいつまでもなにも答えないからか、すっ、と顔を戻して



「まあ、いっか」



そう言って、新たに注文したビールをゆっくりと喉に流し込んだ。
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