恋の魔法と甘い罠
「叶わない恋って何のことですか? 和泉さんのことですか? 紗羽さんのことを忘れられないんですよね? 紗羽さんはもうすぐ結婚するし……叶わないですもんね」



一気に捲し立てるようにそう言って、目の前のビールをぐいっと飲んだけれど……


自分が何を言ってしまったのか……ということに気づいたのは、それから十数秒経ったあとのことで。


目の前にいる和泉さんの表情が曇ったのを見て、酔いが醒めてしまったかように一気に脳内がクリアになり、顔がひきつっていくのがわかった。


あたしが慎也さんのことには触れてほしくないのと同じで、和泉さんだって、きっと紗羽さんのことには触れてほしくないはず。


いくらからかわれたからといって……いくら酔っているからといって……言っていいことといけないことの区別がつかなくなっていたなんて。


ほんとにあたしは、何てことを口走ってしまったんだろう。


後悔しても、もう遅い。


口に出してしまったことは、もう消去できないんだから。
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