恋の魔法と甘い罠
ばちっ、と視線が絡んだと同時に、どきんっ、と高鳴る鼓動。


“好き”という感情はなくても、こんな風にイケメンな和泉さんにやさしい笑みを向けられたら、心臓は活発に反応する。


それなのに、そのままそらさずに真っ直ぐな瞳を向けてくるから、さらにどきどきという音が大きくなっていく。


あまりにもその音が大きすぎて言葉を発することができずにいると、和泉さんは不思議そうに首を傾げながら



「玲夢?」



と言って、少しだけ顔を近づけてきた。


その仕草に、大きくなる鼓動と比例して、じわりじわりと頬の熱が上がり始めた。


これ以上近寄られたら……このまま視線を送られ続けたら……あたしの心臓は間違いなく壊れると思ったから、とりあえず距離をとろうと



「ち、近すぎますっ!」



と言いながら、顔を後ろに引いた。


そんなあたしの行動に、和泉さんはまた、ふっ、と笑みを漏らす。
< 98 / 357 >

この作品をシェア

pagetop