2years

その言葉はとても重く冷たく、痛いほどだった。

まるでその一言で命の重さを物語っているようだったが、それを分かっていた春疾にとって信じられなかった。


「え？」

千早の父は春疾に現実を突き付けるかのように再度もう一度言う。

「千早は死んだんだ。2ヶ月前に･･･」

千早の母は子を抱いてその場で泣き崩れ、それを千早の父は抱くように支えた。

苦痛で泣きそうな顔をする千早の父。

それに対して春疾に未だに信じられなかった。

だが、夫婦の様子を見ると嘘でもなく現実なのだと思い知らされる。

嘘だろ･･･？何かの冗談か。はたまた、春疾を騙しているのか。


「何かの冗談ですよね？だって、先週このメールが来て俺は呼びだされたんですよ。なのに―――なのに…」

2ヶ月前に死んでいたなんて信じられるはずもない。

ははっと顔を引き攣らせる春疾に対して、

「……」

何も言わず夫婦は顔をしかめた。無言は冗談じゃないと言っている気がした。


嘘だと誰か言ってくれと春疾は心の中で訴えた。

数秒のことが数分にも感じられ、しばらくの沈黙がとても重く現実味がないようであるようだった。

春疾は言葉が詰まって何も言うことができなくて、ただつっ立ている。



それは顔色を変える事も出来ず、笑いも泣きもなく憎しみや怒りもない植物のような城代で


全身の温度が下がり、足元がふわふわと浮いているような気がした。

「真っ直ぐ行って左から3番目のところに千早の墓があるから…挨拶でもしてくれないか？」


のど元が塞いで、声が出ない。

数分して、漸く絞り出した小さな声は上ずった。

「は、はい」

「……。私たちはしばらく外しておくからね。夏名ちゃんが来るころには戻ってくるから」

何かを諭したように、二人っきり―――春疾と千早―――にしておいてやろうという気遣いだろう。