Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~

3.そして夜が始まる

「…本当にそれでいいんでしょうか、課長」

久しぶりに込み上げた怒りに黙っていられなくなった真実が
口を開くよりも先に、意外な所から声が上がった。

真実はおろか、当の第一営業部四課の課長自身も、
全く予想していなかった言葉に耳を疑った。
二人だけでなく、早川や田中も含め、
その会議の出席者一同が声の主へと一斉に視線を向けた。

「コールセンターのチームから先程指摘された点は
 全く以ってその通りだと思います。
 直ぐにでも改善すべきではないでしょうか」

其処には、レンズ越しにさえ分かる澱み無い真っ直ぐな眼差しと
決然とした口調で、上司に疑問を呈した黒野雄司の姿が在った。
< 130 / 146 >

この作品をシェア

pagetop