Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
バスルームから出てリビングに戻り、
自分が帰宅した時とほとんど変化のないその部屋を見て
真実は軽く溜息を零した。
唯一の違いは食卓の上にラップ掛けされた夕飯が在る事くらいだ。
均がいつ帰って来ても食べられるようにと真実が用意した夕飯は
冷めつつあった。
リビングの傍らに在るソファへと腰を下ろす真実の足音以外、
2LDKの空間には音らしい音は無かった。

ゴールデンブラウンの二人掛けのソファに座り、
真実はその脇のチェストに置いてあった携帯を手にした。
新着メールは――特に無し。
時刻はもう直ぐ22時を迎える所だった。

携帯を握り締めたまま、真実は深く背凭れに寄り掛かり、
白い天井を仰ぎ見る。
「羨ましいなぁって純粋に思います」
真っ直ぐにそう述べた田中の言葉が蘇る。
遣る瀬無い笑いがつい零れてしまって、直ぐに目を伏せた。
携帯を持つ手をこつんと額に当てて、
ずるりと両脚を前へと伸ばした。
「見える部分が全てじゃないのに、ね……」
誰に告げる訳でもなく呟いたその言葉に
携帯の突然の鳴動が呼応した。
びくっと真実は背凭れから上半身を離して携帯を開いた。
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