Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
着信主の名前を見て、真実は電話に出るか、少し躊躇した。
余り話したい気分ではない。
しかし、もしもの事があっても困る。
5回ほど呼び出し音が鳴ってから、真実は
「…もしもし…」
重い口を開いた。

「もしもし、母さんだけど」
聞き慣れた声が応えた。

「均さんとご飯食べてたのかしら?電話、大丈夫?」
「あぁ、均ならまだ帰ってなくて……
 お風呂上りだったから直ぐに電話出れなくてごめんね」
「あら…もう10時になるけど、まだ帰ってないなんて
 相変わらずお仕事大変なのね、均さん」
「ちょっとトラブってるみたい。早く片付くといいんだけど…」
真実は玄関の方へと視線を飛ばしながら、
「お母さんこそどうしたの?お父さんまた具合悪くなったとか?」
眉間を寄せて尋ねた。

「ううん、そういうのじゃないわ。
 手術後は割と落ち着いてるし、大丈夫よ」
きっぱりとした母の口調と返事に真実は胸を撫で下ろし、
良かった――と呟くよりも先に、
「今日電話したのはね、従姉妹の咲ちゃんって居たでしょう?
 ほら、一昨年に結婚した…」
母の饒舌が始まった。
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