Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
この時点で真実は厭な予感がした。

「咲ちゃんね、おめでたですって!」

――案の定だ。
また、このテの話か――真実はげんなりした。

そんな娘の心境など慮る余裕もないのか、
話したくて堪らないのか、母は一方的に喋り続ける。
こうなったら止まらない。
だから真実は電話に出るのを躊躇したのだ。
年々、この類の話が増えて行く。

「結婚して直ぐに妊娠だなんて理想的よね…
 咲ちゃんも旦那さんも童顔だから、
 男の子でも女の子でもきっと可愛い子になると思うの。
 ね、真実もそう思うでしょう?
 今頃は咲ちゃんも旦那さんも幸せいっぱいよねぇ…
 そうそう、お祝いは何がいいかしら。
 真実もちゃんとお祝い用意しなくちゃ駄目よ?
 均さんとも相談してしっかり考えておいてね」

携帯を耳から僅かに離して聞いている真実をよそに、
母は息継ぎもせずに喋り立てる。

どうして自分の子供でもないのに
可愛いと思えるのか。

どうして自分の子供でもないのに
そんなに大騒ぎをするのか。

どうして自分の子供でもないのに
彼女達が幸せだと思うのか。

それはきっと――
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