Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
「それじゃ、そろそろ行くから…真実も気をつけて」
均がそっと真実の額に唇を寄せ、静かに口付けた。
軽く片目を閉じてキスを受けた真実は
ちらと均を見上げた。
「均もね。ネクタイ忘れないでよ?」
「……ぁ…」
「……………」
そのままジャケットを羽織って玄関に向かいそうだった夫を
前にして、つい、真実は吹き出してしまった。

「もう、仕方ないんだから……ちょっと待ってて」
直ぐにクローゼットから均のネクタイを取り出すと
「サンキュ。助かった」
優しく笑って均は受け取ったネクタイをバッグの中に仕舞い、
今度こそジャケットを羽織って玄関へと向かった。

その後姿に真実は慌てて声を掛けた。
「あ、ちょっと待って、均」
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