Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
小動物のような田中の言動を見ていると
ついつい放っておけなくなってしまう気がして
真実はホットコーヒーから口を離して二人の顔を見遣った。
「あのね、貴女達…
 私なんてまだまだなんだから、
 もっと他の人を見習いなさいって」
「だって、室長みたいな人、それこそ他に居ないですよ!
 仕事もデキて、優しい旦那さんも居て、
 羨ましいなぁって純粋に思います」
真実の対面に座っていた田中がぐっと身を乗り出して力説した。

その無邪気な言葉に、真実はほんの少しだけ息が詰まった。

ちりちりと喉が焼ける感覚。

何度目かの既視感と違和感。

その感覚が、いつも何と応えればよいのか、真実を惑わせる。
< 9 / 146 >

この作品をシェア

pagetop