天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅡ
「…………」

目の前に蹲る、怯えた幼子のような、しかし刺々しい殺気を身に纏ってファイブセブンを両手で構える苺愛。

舞白は頬の傷もそのままに、薄く微笑む。

「はじめましてね…栗花落 苺愛さん」

その不可解な発言に、龍娘が訝しげな顔をする。

「先生…彼女こそが『栗花落 苺愛』さんです…」

舞白は言う。

…これまで試合の中で戦っていたのは、苺愛であって苺愛ではない。

目まぐるしくキャラクターの変わる、栗花落 苺愛という女子生徒。

しかしどのキャラクターも、本当の彼女ではなかった。

…苺愛が、この天神学園に訪れるまでにどのような人生を歩んできたのかは分からない。

だが本当の苺愛は、目の前の彼女。

人と接する事を恐れ、他人を傷つける事を恐れ、本当の自分を曝け出す事を恐れる、無垢で臆病な少女だった。

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