天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅡ
「敗北した事がないというのは語弊ですよ」

こはくは照れ臭そうに俯く。

「十代後半に入ってから無敗記録を持続中…ではありますけどね」

「同じ事です…勝ち続けるという事は、非常に難しい事です。技術や力を磨く事も勿論ですが…」

舞白の瞳が細められた。

何もかも見透かすように、見極めるように。

「勝利を重ねる事、重ねなければならない事…それを責務として課せられた…いえ『科せられた』瞬間に、それはとてつもない重圧となります…」

「…………」

こはくから笑みが消えた。

琥珀色の瞳、口許には微笑。

今大会でいつもリング上で見せていた微笑みが、一瞬ではあるが消えたように思えた。

…舞白は懐中時計に視線を落とし、すぐにこはくへと視線を戻す。

「思うにこはくさん…貴女の魂の救済には、敗北が必要なのかもしれません…」

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